(1)「人」の見当識:子ども・配偶者・親・友人などが分かる。
(2)「動物」の見当識:自分のペット、よく見る知り合いのペットが分かる。
(3)「自分」の見当識:自分自身が分かる。昔の自分、今の自分が分かる。
(4)「自分の物」の見当識:自分の持ち物、所有物が分かる。
(5)「他人の物」の見当識:他人の所有物が分かる。誰のものかが分かる。
「人」の見当識について
人の見当識とは、その人が誰で、自分にとってどのような関係なのかが分かる能力です。
例えば、子ども、夫・妻、親、兄弟、親戚、友人、上司、部下、同僚、同級生、隣人、友人の○○さん、などです。
基本的に、本人の記憶が残っている時代で関係が深かった人ほど、残りやすいようです。
また、最近の記憶が障害された場合に、対象者の子どもを本人と誤認することもあります。
人の認識は、顔による認識、姿による認識、動作による認識、声による認識、匂いよる認識、触り具合による認識、これらの複合による認識などがあります。
人の見当識では、「人」としての認識、その人と自分の関係性の認識、その人が誰かの認識、などから成り立ちます。
「動物」の見当識について
動物の見当識とは、動物に関して、その動物が自分にとってどのような関係にある動物か、名前がある場合は、どういう名前かが分かる能力です。
例えば、自分がペットとして飼っている犬や猫などは、ほかとは違う犬・猫として区別でき、認識されます。
場合によっては「うちの子どもの○○ちゃん」など、擬人化されることも多いようです。
「自分」の見当識について
自分の見当識とは、自分を自分として認識すること、自分を唯一の者として認識すること、自分を他とは独立した主体として認識すること、経時的に異なる自分(子どものころの自分〜今の自分)も同一の主体として認識すること、などです。
「自分の物」の見当識について
自分の物の見当識とは、ある物が自分の所有物であるかどうかを正しく認識できる能力です。
「他人の物」の見当識について
他人の物の見当識とは、ある物質が他人の所有物であること、場合によっては、誰の所有物かが分かる能力です。
人の見当識低下に対するケア
「人の見当識」の基本となるのは、自分の認識(自己認識)です。
人が「なぜ自分を自分と認識するのか」「自己認識の機序はどうなっているのか」などは十分解明されていません。
私たちは、日々、新陳代謝で細胞が入れ替わっています。
そのため、1年前の「私の体の細胞」と今の「私の体の細胞」は別の物です。
しかし、私たちは1年前の私たちも今の私たちも同じように「自分」と認識しています。
アルツハイマー型認知症に「鏡現象」といって鏡に映った自分を他人と認識し、話しかける現象があります。
鏡の中の自分を自分と認識することを、「鏡像自己認識」と呼びます。
写真の中の自分を自分と認識するのは、鏡像自己認識を獲得した後です。
自己認識のチェックは、「マークテスト」で行います。
顔に貼られたシールや口紅のあとなどを鏡で見て、自分の顔のシールや口紅を取ろうとするかチェックします。
Botvinickら(1998)の実験で、テーブルの上に置かれた義手と下に隠れた本人の手を同時刺激し続け、その後、義手だけを刺激しても本人は自分の手を刺激されていると感じた、という研究があります。
自分の手ではない義手を自己認識してしまったわけです。
これから感覚刺激だけでは、自分認識には不十分なことが分かります。
さまざまな研究から、自己認識は、感覚刺激とともに自分の体を自分で動かしていることを認識させることが有効ではないかと思われます。
前述したように、鏡の中の自分や写真の中の自分、自分の体の認識など、さまざまな視点があります。
このほかにも、子どものころの自分の写真を見て、自分と認識することなど、時間軸の要素からの視点もあります。
自分のことを、自分であると認識することが自己認識です。
前述した鏡現象も、自己認識能力低下の症状の一つです。
ここでは、認知症に見られる自己認識障害を、以下の4種に分類しています。
自分の身体と環境との関係を認知する能力が低下する
【1】自己身体-環境認知障害、自分の身体の認知が障害される
【2】自己身体認知の障害、自分自身の能力の正確な把握が障害される
【3】自己能力認知の障害、自分を自分と認識できない
【4】自己認知障害
の4つです。
【情報提供元】
実践 認知症ケア2
https://dayshop.biz/item/detail/2152.html
デイの管理者&リーダー「だよりね」
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