2024年6月7日に内閣府より新しい資本主義のグランドデザイン、実行計画の改定版が発表されました。
介護分野に関連する部分について、ピックアップいたしましたので、今後の運営の参考にしてください。
■資格職等における分業の推進等を通じた人手不足業種への対応[医療・介護・福祉分野]
医療・看護・介護・福祉分野 医療・看護・介護・福祉の国家資格については、複数の資格を従来よりも短期間で取得できるようにするため、それぞれの養成課程の中で共通する科目を読み替えて、類似科目について資格ごとの再度の履修を不要とする運用の在り方や、既に修得した単位数・時間数に応じて学修期間を短縮するための課題の整理等を行う。
看護職については、看護学生の学習環境の整備等による新規養成、復職支援の強化、勤務環境の改善を通じた定着促進を進める。
介護職については、本年度の介護報酬改定において、生産性向上を推進する場合の加算措置を創設するとともに、特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化を実施した。
介護助手の活用等を通じた介護現場における職員間の役割分担やテクノロジーの活用等により、職員の業務負担の軽減やケアの質の確保を図る。
医師については、働き方改革を推進する観点から、タスク・シフト/シェアや複 数主治医制の導入等の勤務環境改善に向けた医療機関の取組を促進する。
また、大学病院に所属する医師の研究開発活動について、診療・地域医療への貢 献により十分な研究時間が確保できないという課題があることから、日本医療研究 開発機構(AMED)を通じて、医学研究者の研究時間の確保等に取り組む大学におい て、医師の研究を補助する職員の採用等、研究環境の効率化を進める。
■副業・兼業における割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理の見直し
労働者が副業・兼業を行う場合には、複数の事業場の労働時間を通算して管理する必要があり、割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理について、制度が複雑で企業側にとって重い負担となっているために、副業・兼業の許可が難しいとの指摘がある。
副業・兼業における割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における解釈の変更も含めて検討し、結論を得る。
■最低賃金の引上げ
昨年の最低賃金の全国加重平均は1,004円と、目指していた「全国加重平均1,000 円」を達成した。
引上げ額は全国加重平均43円で、過去最高の引上げ額となった。
今年は、昨年を上回る水準の春季労使交渉の結果を含み、労働者の生計費、事業者の賃金支払能力の3要件も踏まえて、最低賃金の引上げ額について、公労使三者構成の最低賃金審議会でしっかりと議論いただく。
労働生産性の引上げ努力等を通じ、2030年代半ばまでに1,500円となることを目指す目標について、より早く達成ができるよう、中小企業・小規模企業の自動化・省力化投資や、事業承継、M&Aの環境整備等について、官民連携して努力する。
また、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。
■個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入
働き方は大きく変化している。
「キャリアは会社から与えられるもの」から「一人ひとりが自らのキャリアを選択する」時代となってきた。
職務(ジョブ)ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自分の意思でリ・スキリングを行え、職務を選択できる制度に移行していくことが重要である。そうすることにより、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、社外からの経験者採用にも門戸を開き、労働者が自らの選択によって、社内・社外共に労働移動できるようにしていくことが、日本企業と日本経済の更なる成長のためにも急務であり、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を進める。
■現場人材等の評価制度の構築とスキル取得支援
人手不足が目立つ、自動車運転業(物流・人流)、建設・土木業、製品・機械等の製造・加工業(修理や検査を含む)、介護業、観光業、飲食業等といった職種については、業界団体にスキル標準を策定いただき、スキルの評価制度を政府が認定するとともに、政府としても、これらのスキル習得のための講座受講支援を実施する。
具体的には、業界団体・個別企業が策定する民間検定を政府が認定する新たな枠 組みを通じ、既存の公的資格(技能検定等)ではカバーできていなかった産業・職種におけるスキルの階層化・標準化を進める。
さらに、認定された検定に係るスキルの習得のための講座受講については、本年秋より、教育訓練給付の対象に追加し、政府として支援を行う。
官民を挙げたスキルの評価制度の導入拡大を図るため、人手不足感が強く、かつ、労働者のスキル向上を処遇に結びつける仕組みが十分存在していなかった業界を中心に、この制度の導入について、業所管省庁を通じた業界団体への要請を実施する。
■多様なサービス提供と経営の持続可能性
公的サービスの安定提供を前提の上で、一定の条件下のもと、医療法人の附随業務の明確化、介護施設等の保険外サービスの運用改善等を進め、多様なサービス提供や経営の持続可能性確保につなげ、結果として医療介護従事者の賃上げを図る。
さらに、小規模事業者ほど収益性・賃金水準・人手確保等が厳しい傾向にあり、近年、事業承継・再編のニーズも増えていることから、関係施策(事業承継税制、産業競争力強化法による税制優遇、事業承継補助金等の活用)や地域医療連携推進法人・社会福祉連携推進法人の積極的な周知・活用、福祉医療機構による経営支援、各都道府県の事業承継・引継ぎセンター、地域金融機関との連携等によるM&Aの売り手・買い手の円滑なマッチング支援等を進める。
■金融経済教育の充実
家計の金融リテラシーを高め、金融商品の適切な選択等を促すため、本年4月に 設立した金融経済教育推進機構(J-FLEC)を本年8月に本格稼働させ、顧客の立場に立った認定アドバイザーの普及・支援、学校や企業における雇用者向け教育の拡大促進等により、広く国民が金融経済教育を受けることができる機会を提供する。
こうした取組を通じ、2028年度末を目途に金融経済教育を受けたと認識している人の 割合を米国並みの20%とすることを目指す。
本目標の達成に向け、中心的な役割を 担うJ-FLECの取組を支援する。
金融経済教育の展開に際して、安定的な資産形成を実現するためには、自らの資産状況やライフプラン等を踏まえつつ、相場の下落等の市場変動が進む中にあっても、積立・分散投資を止めることなく、長期間継続することが重要である旨を普及・啓発していく。
■NISAの活用
本年1月から新しいNISAが開始され、3月末時点の総口座数は2,323万口座(本年1月から3月で187万口座増)、買付額は42兆円(同6兆円増)となる等、NISAは国民の安定的な資産形成の手段の1つとして受け入れられつつある。
引き続き、より幅広い層の安定的な資産形成を支援していくため、金融業界や金融経済教育推進機構(J-FLEC)とも連携しつつ、個々人のライフプランやライフステージに応じた資産形成、及び、その一環としてのNISAの適切な活用を促す。
こうした取組を通じ、2027年末時点のNISA総口座数を3,400万口座、買付額を56兆円へ増加させることを目指す。
その後、家計による投資額(株式・投資信託・債券等の合計残高)の倍増を目指す。
■企業型確定拠出年金(DC)の改革
DCについて、指定運用方法の投資性商品への変更や運用商品の商品構成の改善など運営管理機関・事業主・加入者本人の各段階において運用の方法の適切な選択がなされるよう、関係者と連携し、継続投資教育、取組事例の横展開等の取組を促進する等の方策を講じる。
その際、元本確保型商品を指定運用方法に選択している場合には、物価が上昇する市場環境下では実質的な購買力を確保できない可能性があることについて、丁寧に加入者に説明するとともに、必要に応じて運用商品の構成の見直しを行うよう、事業主に促す。
また、事業主ごとの指定運用方法や運用商品の構成、運用状況等を含む情報を他社と比較できる見える化(情報開示)を行うため、厚生労働省がこれらの情報を集約し公表する等の取組を行うこととし、次期年金制度改正に併せて所要の措置を講じる。
その他、特に若年層の年金不安が解消されるよう、拠出・運用・給付の各段階を 通じた包括的な見直しについて検討を進める。
■個人型確定拠出年金(iDeCo)の改革
iDeCo制度は、加入した個人自らが定めた掛金額を拠出・運用するものであり、中間層を中心とする層で活用され、家計の資産所得の増加に貢献している。
老後に向けた家計の資産形成の更なる環境整備を進めていくため、年末にかけて議論される予定の年金改革の中で、iDeCoについては、加入可能年齢の上限の引上げのみならず、資産形成の必要性に応じた拠出限度額の引上げ、NISAの普及も踏まえた制度の分かりやすさや加入者の手続の簡素化等の利便性向上を追求する等、大胆な改革を検討し、結論を得る。
■社会的課題を解決するNPO・公益法人等への支援
新たな公益法人制度・公益信託制度による公益活動の活性化のため、公益認定等総合情報システムの改修等の体制整備を段階的に実施する。
公益信託制度に関しては、信託業法との整理を進める。
社会的課題を解決するNPOの取組を後押しするため、NPOの行う事業を支援する中間支援組織を通じて、事業初期における自由度の高い資金供与、人材の確保・育成、事業のコーディネーターの養成・配属等の取組を支援する。
本年度から創設された孤独・孤立対策推進交付金を活用し、孤独・孤立対策に取り組むNPO・地方自治体の取組を支援する。
■自動運転の社会実装
低速・定路線のバス等から自動運転の社会実装を進め、来年を目途に全都道府県での自動運転の社会実験を実現する。
あわせて、ロボットタクシーの実証も実施し、 2027年度までに、無人自動運転移動サービスを100 か所以上で実現する。
また、自動運転の安全な運行等のための地理空間情報(G空間情報)の整備・活用を進める。
■交通インフラの整備・地域公共交通のリ・デザイン
鉄道事業者・自治体等の地域関係者間の連携を促し、2027年度までに、多様な関係者間の連携・協働に先導して取り組む自治体を100団体創出する。
【情報提供元】
内閣府
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai28/shiryou1.pdf