以前の「じりつ(自立と自律)」に対する概念は、他人の力を借りずに自分自身の力だけである活動を行うこと、すなわち「自分のことは自分でする(自己遂行)」という考え方でした。
しかし、現在自立の概念はより広い方向に変化しています。
つまり「本人が選択し(自己選択)、本人が決定すること(自己決定)」が「じりつ(自立と自律)」であって、必ずしも自分自身の身体で遂行する必要はない」という考え方です。
この考え方【自己選択・自己決定・自己遂行のいずれかを実行することがじりつ(自立と自律)という考え方】の方がより広く、また様々な方の自立援助に役立つため、今日ではこの考え方が広まっています。
例えば、進行性の疾患や重度麻痺で自分では身動きが取れない方の場合、昔の自立の考え方だと「この人は全介助レベルで自立度はゼロであり、今後も回復の見込みが無いため、私たちが本人の自立度を上げる手立ては全く無い」と判断されていました。
しかし、今日の考え方だと「例え身体的には全介助であっても、物事の選択・決定は十分可能であり、その環境を少しでも豊かにすることが私たちの役割の一つである」と判断でき、本人の可能性、ワーカーが出来ることの可能性が広がります。
この際大切なことは、「本人が選択」するためには、選べるだけの色々な「選択肢」が必要だということです。
すなわち、ケア提供側は、本人が選べるだけの様々な選択肢をケアの一環として用意しなければいけません。
例えば、お昼が「カレー」のみだと選択の余地はありません。
「カレー」の他にも「カレーチャーハン」「カレーうどん」「おにぎり」と色々用意することが「選択」を可能にするのです。
たとえ「カレー」しか提供できない場合でも「甘口」「辛口」「中辛」とか「ソース入り」「しょう油入り」「野菜カレー」「チキンカレー」などと可能な範囲で出来ることはたくさんあるはずです。
この可能性を捨てずに出来るだけ多くの「選択の可能性」を用意する視点が必要です。
選択肢を用意するためには、お金が必要な場合もありますが、ケアの工夫次第で出来ることもたくさんあります。
例えば、食事のお箸にしても、職員が一方的に配ってしまえば選択の余地はありませんが、箸入れに入った箸の中から好きなものを選んでもらうようにすれば、そこで「自己選択・自己決定」の場面を作ることが出来るのです。
全ての介護職員に、このようなケアを創造する力が要求されています。
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