高齢者の方と毎日接する中で、何らかの“楽しみ”を持っている方とそうでない方とでは、表情や体調、生きる意欲までもが違っているように感じます。
「楽しみ」とは、仕事や趣味、食べること、子どもや孫のこと、農作業や旅行など何でもいいのです。
その“楽しみ”を通して生活全体に活気が生まれます。
しかし残念ながら、「欲しいもの、行きたいところ、したいことは何もない」と言われる方は非常に多いのです。
年齢を重ねるごとに、いろいろなものに対する興味が薄れていくのは、自分自身にも感じるところではありますが、やはりいくつになっても“楽しみ”を持つことが、生き生きとした生活のために大切なことだと感じています。
レク・アクティビティが「楽しみ」を持つきっかけになってほしいと願っています。
レクやアクティビティに参加し、ワクワクドキドキして大いに笑い、ストレスを発散したり、仲間と過ごす楽しさや喜びを感じたりすることで、気持ちが前向きになり、また何か次の“楽しみ”を求める気持ちにつながればいいなと思います。
レク・アクティビティを盛り上げるために、以下の3つのポイントを大切にしながら取り組んでいただきたいと思います。
●環境を整える(ホスピタリティの徹底)
レク・アクティビティを成功させるためにはまず、心地よい環境づくりが必要です。
私たちにとって一番大切なのはご利用者であり、そのご利用者に気持ち良く満足して過ごしていただくことを第一に考えなければなりません。
ホスピタリティとは相手のことを自分のことのように考え、思いやりの心で相手をもてなすことです。
ホスピタリティを徹底させるためには、笑顔と優しい言葉を心掛けてください。
相手をホッとさせるような笑顔は何にも勝るおもてなしであり、相手に安心感を与えます。
相手が認知症であっても、障がいがあっても、人を人として大切にするホスピタリティを全職員が理解し、実施できて初めて、ご利用者はその場を楽しもうという気持ちになれるのではないでしょうか。
嫌な気持ちでいる人が、レクだけを楽しむのは無理なことなのです。
ホスピタリティは職員間にも必要です。
職員同士がぎくしゃくした関係では、ご利用者は居心地が悪くなります。
職員のモチベーションが下がり、仕事の効率も悪くなります。
お互いを思いやり、許し合う心を持ち、職員同士の関係を良くしておくことも、ご利用者をお迎えする上で大切な環境づくりとなります。
●安全を守る
安全を保障することも条件の一つです。
レク・アクティビティを提供するにあたり安全を確保するために、以下の4点を大切にしてください。
[1]しっかり起きていただく
フットレストに足が乗っているのでは、寝ているのと同じ状態です。
目が開いていても頭が半分寝ている方もおられます。
しっかりと覚醒していただけるように声を掛け、姿勢を整えましょう。
[2]正しい座位を保持する
ずっこけ座りは転落やけがの原因になります。
地面に足を着けて、可能であれば車イスから普通のイスに移乗してください。
[3]移動時に注意する
移動時には事故が起きやすいという認識を持って、職員は関わってください。
[4]ヒヤリハットをきちんとマネジメントする
ヒヤリハットが発生したとき、「事故には至らなかったから良かった…」と忘れてしまいがちですが、必ずヒヤリハット発生原因と再発防止策を全員で共有しましょう。
一度起こったヒヤリハットが二度と起こらないように対策を立てることで、大きな事故を予防することができます。
●自分自身が楽しむ
自分自身が楽しめていないスタッフが、人を楽しませることは難しいものです。
スタッフがご利用者と一緒になって燃え、楽しみ、勝敗に一喜一憂する様子を見て、ご利用者もまた盛り上がります。
ご利用者だけを楽しませようとがんばるのではなく、どうしたら自分が夢中になって楽しめるだろうと考えて提供する視点も必要です。
夢中になって楽しむコツには、下記のような要素があります。
(1)競争
個人戦、チーム対抗戦など、勝敗のある形にすると競争心を刺激し、盛り上がりも倍増します。
(2)チャレンジ
タイムに挑戦(パズル、計算問題など)、点数に挑戦(ボウリング、パターゴルフ、ダーツなど)、数に挑戦(玉入れ、風船ラリーなど)など、競争の要素と同様に、何かにチャレンジすることもご利用者の意欲を高めます。
例えば、ボール送りをする場合、ただボールを送るだけでなくタイムを測定し、記録にチャレンジするなどひと工夫してみましょう。
(3)小道具、コスチューム
ゲームに合ったBGMやはちまき、コスチューム、小物など、ご利用者が五感で楽しめるように準備することで満足感が高まります。
(4)ネーミング
センスの良いネーミングはご利用者の期待感を高め、話題が広がるきっかけになります。
また、独自の名前を付けることで、オリジナルのレク・アクティビティとして親しみが感じられます。
(5)報酬
誰にとっても何らかの報酬があるのは嬉しいことです。施設内通貨を導入している施設も増えていますが、それ以上に感謝の言葉、承認、フィードバック、良好な人間関係などのコミュニケーション報酬も重要な要素の一つです。
【情報提供元】
日本ケアレク研修会2025
【お役立ち研修】