「ひどいケガをしているのに、なぜ病院へ連れて行ってくれなかったの?」と憤る家族
利用者Eさん(88歳女性、要介護3)は、認知症はなく、週1回デイサービスを利用しています。
ある日の昼食後、Eさんはトイレで転倒しそうになり、手すりに左目の下をぶつけてしまいました。
介護職員がケガの状態を看護師に見せましたが、Eさんは「痛みはないし、大げさにしないで」と言います。
看護師はしばらく様子を見ることにして、家族に連絡を入れました。帰宅送迎の時間となり、看護師が再度Eさんの顔を見ると、頬骨の辺りが少し腫れていましたが、そのまま送迎しました。
ところが午後5時ごろ、Eさんの娘さんからデイサービスに電話があり、「ひどいケガなのになぜ病院へ連れて行ってくれなかったの?」と憤慨しています。
詳しく様子を聞くと、左目の周りが殴られたように内出血しており、頬もひどく腫れていて、Eさんは「ズキズキ痛む」と言っているようです。
看護師は、「頬骨は軽度の打撲でも腫脹(腫れ)が出やすい部位ですから、心配ありません。左目の周りの赤い痕は打撲のショックでできる内出血で、これもすぐに消えます」と説明しました。
しかし、娘さんは「すぐに病院に行きます。ケガをしているのに放置するのは虐待よ」と言い、看護師の対応について事業所にクレームを入れました。
なぜ娘さんは憤慨したのか?
なぜEさんの娘さんは、Eさんの様子を見て憤慨したのでしょうか?
主な理由は2つ考えられます。
[1]昼間の電話連絡で聞いた事故状況から想像したケガの程度と、実際の様子が全く違ったことに驚いたから
[2]娘さんは「ひどいケガだ」と感じたのに、看護師の説明が冷淡に感じたから
看護師の対応は間違っていたのか?
おそらく、看護師の判断も説明も医療的には正しかったのでしょう。
しかし、医療的に正しい判断や説明をしても、必ずしも家族の共感や賛同を得られるとは限りません。
家族は医療の専門家ではなく、ケガの見た目や印象で判断することが多いからです。
そのため、看護師が「医療的には軽微なケガで受診の必要はない」と考えても、家族が不安を感じれば、受診の判断を巡ってトラブルにつながることがあるのです。
■看護師の対応
・医療的に正しい判断や説明をした
(家族の反応)医療の専門家ではないため、ケガの見た目や印象で判断した
・軽微なケガであり、受診は不要と考えた
(家族の反応)軽微なケガだと感じなかった
この事例で火に油を注いだのは、家族に対する看護師の説明の姿勢です。
まるで、「こんな小さなケガで大騒ぎする方がおかしい」と言わんばかりに、医療的な判断だけを一方的に淡々と述べています。
せめて、少しでも家族の立場になって気遣う言葉をかけていれば、印象も違ったはずです。
理屈は関係なく、ケガの様子から感情的になり、うろたえてしまう家族もいます。
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