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介護で最も大切なこと

2021.01.04

人間の尊厳と自立

介護保険法は、要介護状態となった者の尊厳を保持し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要なサービスに係る給付を行うことを目的に創設されました。

この「尊厳の保持」「自立した生活」とはどのような意味でしょうか。


※介護保険法 第一条※

この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。


人生観

「人間」は一人ひとりが固有の独立した存在で、かけがえのない存在であり、それぞれの人は、その人ならではの価値観、人生観を持っています。

個々の生活状況と特性を踏まえ、その人がどのような生活支援を求めているのか、何を大切にしているのかを理解することが重要です。


基本的視点【基本的人権の視点】

人間の尊厳を理解する上で、基本的人権の視点は重要です。基本的人権とは、人間が生まれながらに持っている、生きていくために必要な社会的権利のことで、誰も侵すことができないものです。

日本国憲法では、平等権(差別されない権利)、自由権(自由に生きる権利)、社会権(人間らしい最低限の生活を営む権利)、参政権(政治に参加する権利)、請求権(人権が侵害された場合に国に救済を求められる権利)などが、「公共の福祉に反しない限り」基本的人権として保障されています。


基本的視点【アドボカシー(権利擁護)、エンパワメントの視点】

介護では、要介護者を大切な一人の人としてとらえ、相手の尊厳を損なわないようにかかわっていくことが大切です。

当然、個人の基本的人権は、要介護状態であっても守られなければなりません。

人権は、弱い立場になったときに侵害されやすいため、介護に従事する者は弱い立場になった人の権利を守るアドボカシー(権利擁護)の視点を持つことが大切です。

自分自身の権利を主張、行使できにくい認知症の人や重度障害者、終末期の要介護者などでは、介護者が本人の権利を代弁していく、守っていくという視点も必要です。

本人の権利を擁護すると同時に、本人に内在する「自分自身の問題・課題を解決していく力(エンパワメント)」を強化する視点も必要です。

人はみんな、素晴らしい力を持って生まれ、たとえ要介護状態になっても何らかの能力が残存しています。

一人ひとりの残存能力を最大限に引き出し、本人が自分の力で生活・人生を切り開いていくことを支援する視点が重要です。

支援する際は、生活・人生は人によってさまざまであり、一人ひとり異なる能力・性格・価値観・文化的背景などがあることを理解しておく必要があります。

また、人にはそれぞれの役割があることを理解し、その役割を十分に発揮できるよう支援することも大切です。


基本的視点【ノーマライゼーションの視点】

ノーマライゼーションとは、1950年代にデンマークのバンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.E.)の「知的障害者の家族の会」の施設改善運動から始まった思想で、「障害者や健常者が分断されるのではなく、共に生活するのが本来の在り方であり、望ましい社会の在り方だ」とする考え方です。

現在では、障害者福祉だけでなく、社会福祉全体の重要な理念となっています。

この考え方は、障害者や高齢者が普通の生活を実現できるよう、住まいや活動の場の保障、安全な暮らしの確保、自由な社会参加といったバリアフリーの促進、質の高い生活の実現に向けた幅広い福祉の思想として発展しています。


基本的視点【プライバシー保護の視点】

プライバシーとは、「他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由」(広辞苑)、「個人的な日常生活や社会行動を他人に興味本位に見られたり干渉されたりすること無く、安心して過ごすことができる自由」(新明解国語辞典)と定義されています。

プライバシーを守る権利は、19世紀末のアメリカでサミュエル・ウォーレン(Samuel D.Wareen)らが「一人にしておいてもらう権利」として提唱したのが始まりと言われています。プライバシーの侵害として、プロッサー(Prosser,W.L.)は「私生活への侵入」「私的事実の公開」「誤解させる表現」「氏名・肖像などの無断使用」(一部改編)を挙げています。

介護は、個人への直接的なサービスであるため、個人の生活や個人情報にかかわることが多くなります。

直接的なサービスを行う時点でプライバシーが侵害されるわけですが、「自分の生活の質を高めるため」という理由で、本人はプライバシーの侵害を許容しているのです。

介護者は、本人の生活や情報に接する際には、私生活への侵入を必要最小限にとどめ、不必要に侵害したり興味本位でかかわることがあってはいけません。本人が安心して暮らせる権利を守る視点が大切です。

したがって、本人が許可しない限り、他者(あなたの家族も含む)に要介護者の私的情報を話してはいけません。


尊厳の保持を介護で具現化するために【尊厳の保持】

「尊厳」とはどのような意味でしょうか。広辞苑には、「とうとくおごそかで、おかしがたいこと(尊く厳かで、侵しがたいこと)」と書かれています。

さらに日本国憲法第十三条には、「すべて国民は、個人として尊重される」と明記されています。


※日本国憲法 第十三条※

個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする。


介護でも、個人を尊重することが求められています。

介護は、目の前にいる要介護者に対して実際にサービスを提供する仕事です。

サービスを通して「尊厳の保持」という考え方を実現していくことが求められます。

抽象的な概念である「尊厳の保持」を介護で具現化するためには、実際の介護場面を想定して考えるとよいでしょう。

この際、「身体面」「精神面」「社会面」という3つの視点を持つことが大切です。

つまり、「身体面で本人の尊厳を守る」「精神面で本人の尊厳を守る」「社会面で本人の尊厳を守る」とはどういうことかを考えます。

考える際には、「本人を危険や不利益、不合理な状況・状態にさせない」という視点から考えると、より分かりやすくなるでしょう。

「身体面」では、けがや病気の発生・機能低下・能力低下・参加低下などを防ぐこと、「精神面」では、痛み・不安・不信・悲哀・怒りなどを感じさせないこと、「社会面」では、社会的権利(例えば、選挙時の投票権)の剥奪・経済的損失などを防ぐことが考えられます。


【情報提供元】

■実践 認知症ケア(一部抜粋)

https://www.dayshop.biz/


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https://tsuusho.com/concentrate

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