要介護高齢者の肺炎予防に効果的な訓練法
これまでの摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)は、脳卒中回復期の意思疎通が可能な患者さんに対して行われてきました。
そのため、患者さんの協力なしではできない訓練が多くあります。
しかし、現在では、認知症をはじめとした慢性疾患を有する高齢者が急増しており、意思疎通が難しい環境での訓練を行う機会が増えてきています。
「既存の訓練を法規通りに行わなければならない」と気負わず、「患者さんも訓練する側も負担の少ない嚥下リハ」を優先して行うと良いでしょう。
意思疎通が難しい方にも効果的な肺炎予防の訓練を紹介します。
誤嚥=誤嚥性肺炎!?
高齢者における嚥下リハを考える際には、『いかに誤嚥性肺炎を予防するか』がポイントとなってきます。
医療従事者の中でも、誤嚥=誤嚥性肺炎と誤解されている場合がありますが、実際には誤嚥に引き続き肺炎が生じるかどうかは侵襲と抵抗のバランスで決まります。
侵襲とは誤嚥物の量や質、誤嚥の頻度を示し、抵抗とは誤嚥物の喀出力や免疫機能を示します。
すなわち誤嚥による侵襲が宿主の抵抗を上回ると誤嚥性肺炎を発症するということになります。
臨床的には、誤嚥を減らす訓練を行なっても誤嚥がなくならない場合には抵抗を上げる訓練に切り替えるなど、侵襲と抵抗のバランスを考えながら訓練を行うことが誤嚥性肺炎の予防には効果的です。
侵襲を減らす訓練
マッサージ・可動域訓練
主な目的/拘縮を予防してスムースに嚥下動作ができるように保つ副次的な目的/覚醒作用や食事の準備運動、唾液分泌の促進など
マッサージ、可動域訓練の適用部位は、口唇、頬、舌といった口腔内・周囲だけでなく肩や頸も含まれ、特に頸の筋肉は嚥下に関連する筋が多く、頸のしなやかさは嚥下機能に大きく影響します。
誤嚥防止のためにも、肩を含めた以下のような頸部のマッサージ、可動域訓練が重要です。
拘縮が生じた症例に行うことも有効ですが、拘縮が生じる前に予防としても行いましょう。
入浴後や温罨法の併用も効果的です。
アイスマッサージ
目的/咽頭への冷刺激によって意識レベルを改善
Thermal-tactilestimulation(冷圧刺激)と区別することもありますが、ここでは同義として扱います。
アイスマッサージは、嚥下反射を改善する手技として用いられることが多くありましたが、刺激部位と嚥下反射が生じる部位が異なるという理由から、嚥下反射を改善するという効果は疑問視されてきています。
嚥下反射の改善のためというよりも、むしろ咽頭への冷刺激によって意識レベルを改善させることを期待して行うとよいでしょう。
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