外出行事中に利用者が行方不明に!
Aデイサービスでは、春に近くの神社へ花見に行くことが恒例行事となっています。
例年より早く桜が満開になった3月末のある日、利用者6名と職員2名で花見に行く計画を立てました。
当日は朝から曇っていましたが、主任のミチコさんは「皆さんが楽しみにしているし、小雨程度なら大丈夫だろう」と判断し、予定通りに出掛けました。
午後1時ごろ神社に着くと小雨が降ってきたので傘を差し、混みあう境内を歩きました。
30分ほどたったころ、職員のシゲルさんが認知症のあるWさんの姿が見えないことに気付き、すぐにほかの職員と手分けをして探しましたが、見つかりませんでした。
シゲルさんは事業所に連絡して応援を呼び、3時間かけて周辺を捜索しましたが見つからず、午後5時半に家族に連絡を入れて警察に捜索願を出しました。
Wさんは翌日に隣の市で保護され病院を受診しましたが、幸いかすり傷だけで大事には至りませんでした。
管理者がWさん宅を訪問し、「職員配置が不十分な上、見守りも足りていなかったことが原因」と家族に説明して謝罪しましたが、家族はデイサービスの対応に納得がいかないようでした。
悪条件の中で行事を決行したことが原因
本事例の管理者は、事故の原因を「職員の見守り不足」と判断しました。
しかし、傘を差すような天候の中、人出の多い神社に出掛ける必要はあったのでしょうか?
つまり、天候や混雑などの悪条件の中で行事を決行したことが、大きな事故原因だと考えなくてはいけないのです。
では、どのような条件なら外出行事を“ 中止” と判断すべきなのでしょうか?
利用者は行事を楽しみにしていますから、本事例のような微妙なケースでは中止の判断が甘くなりがちです。
あるデイサービスでは、少しでも天候に懸念があるときは、ほかの屋内施設に行き先を変更することにしています。
このようなルールを決めておけば、判断に迷ったときに無理をしてリスクのある場所へ出掛けなくてもよいのです。
なぜ3時間も職員だけで探したのか
本事例にはもう一つ大きな問題があります。
外出行事中に認知症の利用者が行方不明になったときの対処です。
どの事業所でも、初めは付き添いの職員が必死に探して、それでも発見できないと職員総出で捜索します。
しかし、時間がたってから職員総出で探してもあまり効果がなく、見つからないケースも多いです。
認知症利用者の行方不明発生時の鉄則は、「行方不明の発生と同時に、たくさんの人の手を借りて有効な捜索を行うこと」です。
本事例の場合、職員がすぐに神社の社務所に行き、「迷い人の呼び出し」をしてもらうべきでした。
境内にはたくさんの人がいますから、これらの参拝客や花見客の手を借りなくてはなりません。
事業所内でも外出先でも、認知症利用者の行方不明は完全には防げません。
周囲の「手と目」を借りて迅速に万全の捜索を行うには、対処方法をマニュアル化しておく必要があります。
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