「尊厳を守る」とは、具体的にはどのようなことなのか
私たちはケアを行うとき、利用者の方を一人の大切な人としてとらえ、相手の尊厳を損なわないようにかかわらなければいけません。
尊厳を守るときには、「身体面」「精神面」「社会面」それぞれの面の尊厳に注意を払う必要があります。
身体面では、怪我や病気の発生、機能低下・能力低下・参加低下の発生を防ぐことなどであり、精神面では、痛みや不安・不信、悲哀、怒りなどを感じさせないことであり、社会面では社会的権利(例えば選挙時の投票権)の剥奪、経済的損失などを防ぐことです。
尊厳とは
日本国憲法第13条では、「すべて国民は、個人として尊重される」と述べており、介護保険法でも平成17年の改正で、介護保険法の目的に要介護状態となった高齢者などの「尊厳の保持」を明確化する趣旨が盛り込まれました。
第一条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
また、平成15年6月に提出された、高齢者介護研究会の「平成27年の高齢者介護(高齢者介護研究会報告案)」でも、「高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」という副題が掲げられています。
このように、介護分野では利用者の尊厳の保持が重要と考えられていますが、それでは、尊厳とはどのような意味でしょうか。
各国語辞典などには、「尊厳とは、とうとくおごそかなこと、気高く犯しがたいこと」と書かれています。
したがって、「利用者の尊厳を保持する、支える」ということは、「利用者の持つ、とおとくおごそかなこと、犯しがたいことを保持する、支える」ということになります。どちらの表現にしても抽象的ではっきりしないため、各現場で具体的な言葉や内容に置き換えることが必要です。
介護現場で話題となる尊厳は「利用者の尊厳」ですが、利用者の尊厳と同様に「介護者の尊厳」も守られなければいけません。
介護者には、家族のほか職員も含まれます。
今までは、利用者である高齢者や障害者の拘束・虐待などが注目されてきましたが、近年、利用者から介護現場で働く職員に対しての、暴力や性的嫌がらせの問題も顕在化してきています。
また、介護職の不足に伴い、職務内容に比べてあまりにも安い給与や過酷な労働条件などの問題も顕在化してきています。
利用者の尊厳の保持が大切なことは言うまでもありませんが、介護現場で働く職員の尊厳も同様に大切です。
基本的な考え方
相手の尊厳を損なわず、豊かな生活を実現するために、「身体面」「精神面」「社会面」それぞれの面に注意を払った対応が必要です。
下記の例を参考に、それぞれ自施設の状況やより良いサービスにするための工夫などを継続して話し合をしていくことが必要です。
【尊厳を「守る環境づくり」と「損っている例」】
■身体面
○尊厳を守る視点「怪我予防の環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・転倒骨折
・誤嚥
・褥瘡
・やけど
・手荒い介護
・たたく
・つねる
・身体拘束
○尊厳を守る視点「病気予防の環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・感染症(白癬症・食中毒・風邪 など)の感染予防をしない
○尊厳を守る視点「機能低下予防の環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・生理現象を放置する、我慢させる
・能力を使う機会をつくらない
・過剰な介助をする
・長時間放置する
・外出しない、外出させない
■精神面
○尊厳を守る視点「不安を感じさせない環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・放置する
・一人ぼっちにする
・不安な環境下に置く
・怖がらせる・びっくりさせる
○尊厳を守る視点「不信感を抱かせない環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・嘘をつく
・でまかせを言う
・約束を忘れる
・だます
○尊厳を守る視点「悲哀を感じさせない環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・無視する
・差別する
・仲間はずれにする
・あざ笑う
・いじめる
・孤立させる
・決め付ける
○尊厳を守る視点「怒りを生まない環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・馬鹿にする
・子ども扱い
・見下す
・強要する
・後回しにする
・無視する
・欺く
■社会面
○尊厳を守る視点「権利を剥奪しない環境づくり」
×尊厳を損なっている例
・職業選択の自由を守らない
・言論の自由を守らない
・選挙権を行使させない
・生存権を侵害する
・男女で平等にしない
・基本的人権などの権利を守らない
○尊厳を守る視点「経済的損失をさせない」
×尊厳を損なっている例
・本人のお金で無駄な買い物をする
・本人のお金で高価な買い物をする
・本人のお金や物の無駄な消費をする
・非効率なケアをする
・効果のないケアをする
【情報提供元】
■デイの管理者&リーダーオンライン
【学ぶ】
■【2021年介護報酬改定・介護保険制度改正直前対応】地域包括ケア・包摂支援時代の通所系サービス生き残り戦略特別リレー講演
https://tsuusho.com/daysurvival
■実践!認知症ケア研修会2021
■事業所運営の課題解決に直結する! すぐに始める「強い組織」をつくるための立て直しセミナー
https://tsuusho.com/management2021
■新年度直前対応!デイ運営と事業展開3日間セミナー
https://tsuusho.com/management3days
■報酬改定対応!デイ加算算定のための評価・書類・記録・プログラムセミナー
■介護職・看護師・リハ職のための認知症ケア集中セミナー
https://tsuusho.com/concentrate
■【WEB同時配信】介護施設・事業所における新人職員と中途採用職員を即戦力にするためのセミナー
https://www.tsuusho.com/establishment/