Aさん(80歳代・女性)は、夫と二人暮らしです。
5年前にアルツハイマー型認知症と診断されました。
診断を受けた当初は、同じことを繰り返し話し、言いたい言葉がなかなか出てこないという症状が見られました。
最近は言葉数が減り、その分落ち着かず歩き回ったり、人の言うことを聞かず勝手な行動をとることが多くなりました。
夫は、何度も説明をしたり、気を付けてほしいことを紙に書いて貼るようにしましたが、効果は見られません。
ある日、廊下で排尿していたAさん。
夫が注意すると、Aさんは怒り出して夫に手をあげました。
また、デイサービスでは機嫌良く過ごしていますが、自ら話すことは少なくなっている様子が見られます。
夫は、Aさんへのコミュニケーションの方法をデイサービスの職員に相談しました。
【Aさんの情報】
・5年前にアルツハイマー型認知症と診断
・言葉数が減った
・人の言うことを聞かず勝手な行動をとる
・注意を紙に書いて貼るが効果はない
・怒って夫に手をあげる
・デイサービスでも自ら話すことは少ない
アルツハイマー型認知症の経過
アルツハイマー型認知症の経過は、個人差はあるものの、脳の障害(萎縮)に伴い平均10年かけてゆっくり進行すると言われています。
軽度では、記憶障害の影響で「同じ話を繰り返す」という特徴的な症状が見られます。
さっき言ったことを何度も話すことで周囲の人は、記憶障害に気付きます。
また、言おうとしている言葉が思い出せずに「あれ、それ、これ」などと代名詞で言葉を補うことがありますが、言葉の意味は理解できるので意思疎通に問題はありません。
認知症が中等度になると、見当識障害や実行機能障害が進行し、コミュニケーションにも影響を与えます。
特に、言葉の意味の理解力の低下によって、使用する単語(言葉)が減少し、会話が少なくなることがあります。
また、言葉の流暢性が低下し、自分の思いや考えを適切に伝えることが難しくなることで混乱が生じ、言葉より行動で伝えようとすることが多くなります。
介護者は、こうした経過を理解できないと、「問題行動」としてとらえてしまいます。
重度になると、言語的コミュニケーション能力はさらに低下します。
同じ言葉を意味なく繰り返したり、独自の言葉を使うなど、意思疎通が難しくなります。
最終的には自ら言葉を発することはなくなり、無言状態になると言われています。
Aさんに見られる症状
・言葉数が減った→言語機能の低下
・人の言うことを聞かず勝手な行動をとる→理解力の低下
・注意を紙に書いて貼るが効果はない→言語機能の低下
・怒って夫に手をあげる→理解力の低下
・自ら話すことは少ない→言語機能の低下
アルツハイマー型認知症と診断されて5年が経過したAさんのコミュニケーションの障害は、「言語機能の低下」「理解力の低下」が主になっていることから、認知症は中等度の状態に進行したと考えられます。
現在、アルツハイマー型認知症は治る病気ではないため、症状は進行しても改善することは難しく、介護者がAさんの状態を理解していないと、「何で分かってくれないの?」「何度も説明しているのに」ということになります。
Aさんの認知症の進行経過を理解するとともに、Aさんに合ったコミュニケーションの方法をとることが必要です。
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