
看取り期に必要なリスクマネジメントの視点
看取りケアにおいて「本人が望む最期」を実現するためには、医療や介護の技術だけでは不十分です。
事前に共有していたはずの「本人の望み」が意思決定で揺らぎ、家族の動揺、職種間の連携不足など、さまざまな要因が重なり、当初共有していた方針が崩れてしまうことがあります。
終末期こそ、日々のケアに加えて「何を守るのか」という視点を持ったリスクマネジメントが求められます。
ここでは現場で起こりやすいリスクに焦点を当てながら、本人らしい最期を支えるために必要な視点と実践のポイントを整理します。
リビングウィルは「変わるもの」という前提を持つ
終末期の意思表示は固定されたものではありません。
身体状態や心理状況の変化によって、本人の考えは揺れ動きます。
現場では「以前こう言っていたから」と判断しがちですが、重要なのは過去の意思を守ることではなく、変化にどう対応するかです。
意思が変わった場合には、
・支援体制の再構築
・必要な知識・技術の確認
・家族との再共有
・医療との連携強化
といった対応が求められます。
意思変更そのものが問題なのではなく、それに追随できない体制こそが大きなリスクになるのです。
急変時に家族が迷わないための準備
看取りの現場では、事前に「救急搬送はしない」と話し合っていても、実際に呼吸状態が変化すると家族が強い不安に襲われることがあります。
苦しそうに見える呼吸や意識低下は、自然な経過の一部である場合も少なくありません。
しかし、その知識が共有されていなければ、家族は「何もしないこと」に罪悪感を抱いてしまいます。
[家族支援で重要なポイント]
・急変時の流れを具体的に説明しておく
・どこに連絡すればよいか明確にする
・「そばにいていい」という安心感を伝える
現場スタッフが寄り添いながら言葉で状況を説明し続けることは、医療的処置と同じくらい重要な支援です。
医療機関との情報共有が看取りの質を左右する
本人や在宅チームの間で共有していた方針が、外来受診や入院時に十分伝わっていないケースも少なくありません。
治療優先の判断がなされることで、本人の望む生活が途切れてしまうことがあります。
その予防には、
・紹介状への意思内容の明記
・ケアプランへの反映
・多職種カンファレンスの定期開催
など、「情報が途切れない仕組み」を作ることが不可欠です。
本人の尊厳を守るためには、連携の質そのものを設計していく視点が必要になります。
望みどおりの看取りに共通する行動基準
望む最期が実現できたケースに共通しているのは、特別な技術ではなく、関係者全員が同じ方向を向いていたことです。
・家族が迷ったときの連絡先が明確
・主治医との関係性が築かれている
・介護職が日常生活を支え続けている
こうした日頃の積み重ねが、最期の場面での判断を支えます。
看取りは一瞬の出来事ではなく、日常の延長線上にあるプロセスです。
正解は一つではない…支援者に求められる姿勢
終末期ケアには絶対的な正解はありません。
延命を望む選択も、自然な最期を望む選択も、本人の価値観に基づく大切な意思です。
支援者に求められるのは、
・正しさを決めることではなく
・変化を丁寧に拾い上げ
・チームで共有し続けること
看取りとは、死の瞬間だけを指すのではなく、その人の人生をどう締めくくるかという過程そのものなのです。
在宅看取りを支えるために現場ができること
在宅看取りの環境は地域差が大きく、医療資源の不足という課題もあります。
だからこそ、介護職の観察力や説明力、そしてチーム連携が重要になります。
日常の小さな対話を積み重ねながら、「もしものとき」を想像して準備していくこと。
それこそが、本人の望む最期を現実に近づける最も確かな方法ではないでしょうか。
【お役立ち情報】
【なぜ看取りは怖いのか?】看護師が語る「失敗」と「覚悟」の話
【お役立ち研修】
実践的!看取りケア研修会
次世代介護マネジメントフォーラム
https://tsuusho.com/managementforum




















