アセスメントの視点として応用できる「行動分析学」的な視点
BPSDなどの症状を呈する認知症の人に対して、「寄り添うケア」が重要であることは周知のとおりです。
しかし、根拠を明らかにしないまま、ただ優しくかかわるだけでは、かえってBPSDを誘発させてしまう場合もあります。
そうならないためには、認知症の人のBPSDを根拠に基づいて分析する必要があると言われています。
そこで活用できるのが、「行動分析学」の考え方です。
行動分析学とは、心理学の一種で「人間や動物における、さまざまな『行動を起こさせる原因』を解明し、その法則を見出そうとする科学である」と定義されています。
「行動を起こさせる原因」については、本人の感情ではなく周囲の外的環境から影響された結果である「行動随伴性」という事象を基に分析をします。
この学問は、認知症ケア現場においてまずは「アセスメントの視点」として応用できます。
介護保険によるケアは利用者のニーズを基に組み立てられますが、ニーズは本人から聞けることもあれば、そうでない場合もあります。
認知症などで本人の意思が明確に得られない場合、本人のニーズは介護者や家族による推測の域を出ないことに注意する必要があります。
科学的視点で「言葉にできないニーズ」を
行動分析学では、ニーズを調べるときに「現在の外的環境に影響された結果、このような行動に表れている」と客観的に考え、現場では本人を取り巻く“環境”と、本人が表す“行動”に着目して観察します。
認知症などの疾患や障害に対する「基本的な理解」、個別性を把握するための「本人の過去の体験」「その日の体調」などを収集し、総合的に見てアセスメントし、介護計画を立て、ケアを実践します。
さらに、本人のニーズに合致したアセスメントの基にケアが実践できているかを評価します。
行動分析学的視点は、介護サービスにおいて推奨されている「介護者主観による判断をできる限り取り払い、本人のニーズをより純粋に把握すること」において有効な手段であると期待されています。
行動の分析における落とし穴「循環論に陥る」
認知症の人の性格を「わがまま」と評することがよくあります。
「認知症=わがまま=勝手に行動する」ととらえている家族や介護者も多くいます。
もの盗られ妄想や暴力・暴言などは個人の性格傾向がすべての原因なのでしょうか?
これまでの介護現場では、認知症の人のBPSDを「言語理解力の低下」「記憶力の低下」「感情を抑制できないから」などと、本人側に理由を付けて解決しようとしてきました。
認知症という診断名、本人の能力・性格・感情・好みなど、一面だけに偏って行動の原因をとらえてしまうと、「暴力行為が生じるのは、認知症によって感情を抑制できないから」という考えが生まれます。
それは「認知症によって感情を抑制できないから、暴力行為が生じる」という考えにつながります。
しかし、「この人はこういう人だから仕方がない」と決めつけてしまうと、本当の原因が解明されないまま堂々巡りの状態になり、本人にも介護者にもストレスばかりが募っていきます。
【情報提供元】
認知症ケア各種療法
https://dayshop.biz/item/detail/2174.html
【学ぶ】
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https://tsuusho.com/special_ondemand
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