利用者の自立支援に必要な介護職とリハ職の連携
通所系・訪問系サービスでは病院や施設のリハビリテーション(以下、リハビリ)と異なり、リハ職によるサービス提供の頻度が限られています。
また、在宅の利用者のニーズは多様であり、リハビリ以外のサービス(食事・入浴・家事・買い物など)も居宅サービス計画に盛り込まれることがしばしばです。
このようなことから、リハ職の介入時間が物理的に限られているため、必然的に多職種との連携が必須となります。
また、今後、要支援者の介護保険利用が制限される可能性があります。
現在、要支援者の通所介護と訪問介護は介護予防・日常生活支援総合事業に移行していますが、同事業では、人員要件の緩和が行われており、リハ職以外による自立支援が行われています。
この流れは今後ますます加速し、介護職とリハ職の連携はさらに重要となるでしょう。
リハ職の生活機能の評価と動作分析
利用者のADLや生活機能の向上を図ることを目的とした介護職とリハ職の連携において、もっとも重要なのは「アセスメント」になります。
「アセスメント」なき連携は、中身のない形だけの連携となり、利用者には何の利益ももたらしません。
アセスメントの鍵は、「リハ職の生活機能の評価と動作分析」と言えるでしょう。
生活機能の評価は、生活上の不便を引き起こしている原因を心身機能・活動・参加の因果関係から明確にしていく作業です。
通所リハビリや訪問リハビリの現場では、理学療法士は心身機能、作業療法士は活動と参加、というように偏重した評価や介入を行うといった問題がしばしば認められます。
しかし、リハビリは「人間らしく生きていくこと」を支援するものですので、偏った項目のみへの評価や介入はリハビリとは呼べません。
買い物に行けない、調理ができない、介助者なしでトイレにいけない、呼吸が苦しい、など利用者それぞれが生活課題を抱えています。
生活課題の改善には、心身機能・活動・参加の全体像に対する評価が必要です。
心身機能・活動・参加をバランスよく評価することの重要性を示す次のような事例が在宅の現場では散見されます。
(1)「心身機能」に働きかけ、利用者の筋力や関節可動域が改善し、歩行能力が獲得されたが、「活動」への働きかけが不十分であったため、引きこもりが起こり、廃用症候群が進んでしまった事例
(2)「心身機能」へのリハビリテーションに消極的な利用者が、「活動」や「参加」への働きかけにより、日常生活の活動性とそれに対する意欲が向上し、「心身機能」へのリハビリに取り組めるようになった事例
これらの事例は、「心身機能・身体構造」・「活動」・「参加」が相互に作用することから、リハビリはそれらに対して多面的に働きかけを行う必要性があることを示唆しています。
また、活動や参加が不十分になる理由として、活動や参加に関する動作不良があげられます。
動作が不安定である、関節に痛みがある、持久性が乏しいなどの問題は動作不良が原因になることがほとんどです。
したがって、利用者の動作を分析し、機能障害を特定する動作分析が極めて重要となります。
動作分析を通じて抽出された機能障害の改善を促すことができれば、動作不良が改善し、より活動・参加は向上しやすくなります。
以上のことから、リハ職による心身機能・活動・参加の評価や動作分析により導き出された問題点に対して、介護職と連携しながら解決を図ることが介護保険では極めて重要と言えるでしょう。
【情報提供元】
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