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高次脳機能障害による迷惑行為

2024.06.17

他人への迷惑行為が多い利用者、ほかの利用者を転倒させて利用中止勧告!?

男性利用者のS さんは3年前にくも膜下出血を発症し、高次脳機能障害が残りましたが、現在も毎月、脳神経外科を定期受診しており、特に問題はありません。

日常生活では意思疎通も正常で、記憶障害を除けばほとんど自立していますが、「歩いているほかの利用者に足を引っ掛けようとする」「ほかの利用者の顔に熱いお茶の入った湯呑みを押し付ける」「女性利用者に密着して肩を抱き寄せる」などの迷惑行為が多く、問題になっています。

職員が注意すると、真面目な顔で申し訳なさそうに謝りますが、別の日にはまた違う迷惑行為を繰り返します。

ある日、Sさんはほかの利用者が座ろうとしたイスを引き、利用者を転倒させてしまいました。

幸いけがはありませんでしたが、職員のシゲルさんは管理者に相談し、Sさんの家族に事情を伝えることになりました。

管理者は、連絡帳に今までの迷惑行為を詳細に記載し、「今後このような状態が続けば、利用をお断りすることもあります」と書きました。

翌日、S さんの娘さんから電話があり、「家ではそんな行為は一切ないのに、信じられない。本人に確認したら、興奮して連絡帳をビリビリに破いた。何かの間違いではないか?」と訴えてきました。


Sさんの迷惑行為はなぜデイだけで出るのか?

デイで現れる迷惑行為が居宅で発生しない理由は、Sさんの障害を考えれば当然かもしれません。

高次脳機能障害は、さまざまな生活障害(生活上の行為が自分でできなくなる障害)と同時に「社会的行動障害」が発生します。

社会的行動障害とは「他者との関係において適切な行動ができない」という障害です。

Sさんが家で接する家族は、S さんにとって安心できる存在であるため、居宅ではこの行動障害が出ないのです。

認知症の利用者による迷惑行為も行動障害といえますが、社会的行動障害は、認知症のそれとはかなり違った特徴的な症状が出ます。

これらの社会的行動障害は、周囲の人々にとって大きな問題となりえます。

そのため、Sさんのケアを考える際は、生活障害への援助より社会的行動障害への援助を中心にしなくてはなりません。


社会的行動障害の症状例

・他者に対する気遣いができない(対人関係障害)

・すぐ怒ったり泣いたりする(感情抑制能力低下)

・やる気が起きない(意欲低下)

・一つのことにこだわる(固執)

・身近な人に頼る(依存)

・子どものような行為をする(退行)

・食欲や物欲を抑えられない(欲求抑制能力低下)

・ふさぎこむ(抑うつ)など


【情報提供元】

月刊デイ

https://daybook.jp/day.html

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