Hさん(女性)
・アルツハイマー型認知症
・要介護1
・グループホームに入居して1年ほど
ここ1ヶ月くらい前から、スタッフをつかまえては「今日は何曜日?」「今日は何日?」と聞くことが増え、スタッフの中でも「最近のHさん、曜日や日付に対するこだわりが強くなってきたね」と、話題にあがるようになってきています。
読み物が好きで、新聞は毎日スミからスミまで目を通す様子が見られますが、今まで楽しそうに見ていたテレビにはあまり集中できなくなりました。
少し見ては立ち上がり、通りすがりのスタッフに「あんた、ちょっとちょっと」と声を掛け、曜日や日付を尋ねます。
スタッフがそばに居ないときは、ほかの利用者に聞くこともあり、返事が返ってこないと表情が険しくなり、イライラする場面も見られます。
スタッフは、本人が聞いてきたときにその都度「今日は月曜日ですよ」「今日は15日ですよ」と繰り返し説明しています。
しかし、1日に20回以上聞いてくるので、ほかの利用者のケアに入っているときは「ちょっと待ってください」「また後で来ますね」と、その場でゆっくり対応できないこともあり、結果としてHさんがイライラしてしまうことが度々起こっています。
認知症の進行に伴う障害を理解し、Hさんのニーズを探る
まずは「認知症(疾患)」という視点でHさんの状態をアセスメントしましょう。
Hさんは認知症の進行とともに、日付や曜日が分からなくなる「見当識障害」が見られるようになってきたと 考えられます。
見当識障害は、進行とともに「時間」→「場所」→「人」という順番で分かりにくくなります。
要するに、「変化するものほど分かりにくくなる」のです。
認知症の進行に伴い日付や曜日のように毎日変わるものが分かりにくくなる方が多いのは、皆さんも経験上、感じていると思います。
次に、Hさんのニーズを考えるわけですが、皆さんもよくご存知の認知症当事者のクリスティーン・ブライデン氏は次のように話しています。
「その人の要望に沿って環境を改善する。それが私(認知症当事者)にとって理想的なケアです」
ではHさんのニーズは何でしょうか?
日付や曜日を尋ねたらスタッフが教えてくれることでしょうか。
そうではないですよね。
Hさんのニーズは「スタッフに聞かなくても日付や曜日が分かるようにしてほしい」であり、これを実現することが理想的なケアだと言えます。
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